2012年4月14日土曜日

ロバート・M・パーカーJr氏 Robert M. Parker, Jr. : ワインを語る : ドリンク&ワイン : グルメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


消費者のために働いてきた誇りと自信

 あらゆる世界に評論家がいる。美術、株式、料理……。だが、パーカーほど強大な影響力を誇る評論家はいない。発行するニュースレター「ワイン・アドヴォケイト」(WA)でつけたポイントは、発表された瞬間に市場価格を上下させる。パーカーが好むスタイルのワインに仕上げる生産者すら出ている。インタビュー嫌いのワインの帝王に会って、知られざる素顔に迫った。

 パーカー・ポイントが最も威力を発揮するのはボルドーのプリムール(先物取引)だ。得点が高ければ価格は上がるし、低ければ下がる。サンテミリオンのシュヴァル・ブラン1981年に低い得点をつけたときは、怒った当主に犬をけしかけられて、噛まれた脚から血がとまらなかった。英国王立経済会議は、ポイントはボルドーワインの価格を15%押し上げる効果があると発表した。

 「開かれた心で何でもテイスティングしている。30年間もこの分野で一生懸命働いてきて、自分に自信はある。偉大なワインを形造るものはわかっている。今日では、歴史も文化背景もない産地からも優れたワインが生まれている。1人ではカバーできないほど複雑になったから、同僚と地域を分けた。そのおかげで、私はボルドー、カリフォルニア、ローヌに集中できている」


espacoバンコDOブラジル

 ただ、凝縮したビッグワインを好む傾向はある。批判の的になっているが、スペインの「ピングス」当主のピーター・シセックは言う。「私もパーカーも誤解されている。パーカーはラトゥールだけでなく、ラフィット・ロスシルドにも100点を与えている」と。

 「その通り。私は誤解されている。人々は私の書物や考えを吟味せずに、ビッグワイン好きな男だと思っている。オーストラリアがビッグワインを生産しているのは、気候条件の中でベストを尽くした結果なんだ。我々の仕事は、生産者がどれだけベストを尽くせるかを見極めること。ビッグワインでも、ハーモニーが大切だ」

疲れを感じるようになったら引退する

 広告をとらないWA誌を1978年に創刊した動機は、生産者と癒着した英国のワイン本に疑問を感じたからだ。現在はその英国の評論家から攻撃を受けている。高騰する2005年ボルドーの確定ポイントが厳しかった点が、市場を管理しようとしていると批判された。

 「私は何もコントロールしようとしていない。むしろ影響力を切り離そうとしている。アメリカで私やワイン・スペクテイターやステファン・タンザーのような人間が出てくるまでは、彼らがすべてを牛耳っていた。イギリス人はワインの帝国に住み、権力を他者には渡したくなかったんだ、特にアメリカ人にはね」


UTの時間は何ですか

 186センチの巨体。半年前に手術した背骨は問題ないというが、少し足腰がつらそうだ。服装はかまわない。テイスティングしているときは、強固な意志と集中力で怖い顔になるが、笑うと親しみやすい。弁護士だけあって語り口は明晰だ。

 毎年3月のボルドーでのプリムール・テイスティングは、朝8時から夜7時まで1日で11〜12軒のシャトーを訪ねる。そんな生活を30年も続けてきた。

 「プリムール中は、朝食をたくさん食べて、昼食はとらない。テイスティングによくないから。車に水やバナナを積んでいる。疲れは仕事の敵だから、夜はだれとも会わない。自律心があるんだ。疲れないかって?疲れを感じたり、仕事をこなすエネルギーがないと思ったら、そのときは引退するよ」

 1982年のプリムールで将来性を見抜いて、消費者の信頼を獲得した。アメリカン・サクセス・ストーリーの主人公だが、セレブぶったり、金儲けに走ったりはしない。

 「私はつましい出自で、父は素朴な農民だった。弁護士の友人がお金や権力に走っているのに、ショックを受けた。自分はワインに興味があって、ラッキーなことに良いテイスターだった。それで生計をたてられて、自分の飲むワイン代が払えるんだから十分だよ。昔ながらのシェフのように、表舞台に出ずにキッチンで料理するのが性に合っているのさ」


World Wide Webにどのような変更

毎晩、1、2本のワインを開ける

 10年前に初来日した際の記者会見で、印象的だった言葉を覚えている。「1日の終わりには1人の消費者に戻る」と。自宅兼オフィスで大量の試飲をするが、夜も1、2本のワインを開ける。

 「ワインは素晴らしい飲み物だ。いまだに多くの発見がある。人生と似ている。ボルドーはゆっくりと、ブルゴーニュは速めに年をとり、個性を発展させて、頂点に達すると衰えていく。色があせ、エネルギーが失せ、やがて、明らかな死を迎えるんだ」

 情熱は今も衰えを知らない。テイスターである前に、ドリンカーなのだ。消費者の立場にたった自分の活動に誇りを抱いている。

 「生産者の競争はますます激しくなり、品質は向上し続けている。消費者も賢明になってきた。消費者の評価なしには、クオリティワインも生まれないし、生きて行けない」

 消費者の声が届く流れを作ったという自負が、ワイン界の最高裁判事の原動力になっている。

 WA誌を読むとわかるが、還暦を迎えたグレート・ボブはロック好きだ。60年代のボブ・ディランにショックを受け、ニール・ヤングにしびれている。車のBGMは大音量のニール・ヤングが多いという。私がその2人に取材した話を伝えると、「ワオ」とお得意の表現で驚いた。

 あなたの人生を、ヤングの曲にたとえると、さしずめ(天安門事件に触発された)「ロッキン・イン・ザ・フリーワールド」ですか?

 「うーん、そうだね。ライク・ア・ハリケーンかな」


 アメリカの片田舎モンクトンから起きたハリケーンは今も世界を席巻している。

テキスト&フォト 山本 昭彦

ロバート・パーカーのロング・インタビューが掲載されたワイン専門誌「ヴィノテーク」をプレゼントしています。詳しくはこちら。

プロフィール


ロバート・M・パーカーJr氏  Robert M. Parker, Jr.
ワイン市場を左右する評論家

 1947年米国メリーランド州生まれ。78年に自主独立のニュースレター「ワイン・アドヴォケイト」を創刊。現在は地域別となった担当者と共に世界中のワインを100点満点で評価している。驚異的な試飲能力と記憶力で「神の舌を持つ男」と呼ばれる。

(2008年6月26日  読売新聞)



These are our most popular posts:

ロバート・M・プライス - Wikipedia

ロバート・マクネイア・プライス(Robert McNair Price、1954年7月7日、ミシシッピ州 出身)はUniversal Foundation for Better Livingとして知られるニューソート系団体に 管理運営されたフロリダ州キャロルシティの無認可校であるジョニー・コレモン神学校の ... read more

Amazon.co.jp: ボルドー第4版 ロバート・M・パーカーJr. 著: ロバート・M ...

1985年に初版が刊行されて以来、ワイン評論家の歴史を華やかに彩ってきた『ボルドー 』。最新版である第4版は、1961年から2001年につくられたヴィンテージワインの完全 ガイドである。(日本語版『ボルドー 第4版』では、2002年、2003年の最新情報も『ザ・ ... read more

ロバート・M・パーカーJr氏 Robert M. Parker, Jr. : ワインを語る : ドリンク ...

2008年6月26日 ... ロバート・M・パーカーJr氏 Robert M. Parker, Jr. ワイン市場を左右する評論家. 写真の 拡大. 「私は誤解されている」と. 写真の拡大. 襟元にはイタリア共和国功労勲章(手前)と フランスのレジオン・ドヌール勲章のバッジ. 写真の拡大 ... read more

ロバート・M・フリン - Wikipedia

ロバート・M・フリン (Robert M.Flynn 1920年3月12日-2009年2月7日) は、宗教家・ 教育者。プログレス・イン・イングリッシュなどを中心とした著作活動や教育活動を行っ ていた。 1920年、ニューヨーク市生まれ。カトリック、イエズス会の私立高等学校(4年制 )を ... read more

0 件のコメント:

コメントを投稿